Petrophysics Column
Petrophysicsに関する講演・論文についての紹介/解説ページです。 執筆者の私見や不正確な情報が含まれている場合もありますので、予めご了承下さい。極力出典へのリンクを貼るようにしておきますので、興味を惹かれた論文については原典を参照されることをおすすめします。
(2017/11/19 文責:小松英雄)
内容そのものは、既に要約済みのPetrophysics Journal誌に掲載された同名論文と同じでした。Webinarでは各分析手法が軽くしか紹介されていなかったので、ここでは補足としてGRI, Dean-Stark, Retortの各手法について簡単に紹介します。
Dean-Stark
本来はコア試料からSwを測定する手法。Plug SampleもしくはCrushed Sampleを用いる。
有機溶媒(通常トルエン)に試料を浸し加熱することで孔隙間流体とトルエンを気化させ、 冷却した蒸気から水分を回収・秤量することで試料中の水分量を得る (水はトルエンに不溶)。 抽出前後の試料重量変化と水分量に、地層水および原油の密度を与えることで、試料中の原油量も得ることが出来る。
これらと、別途求めた孔隙率から、水飽和率・油飽和率を求めることが出来る(場合によってはガス飽和率も)。 また、Fluid Lossが存在せず、気相の液体も存在しないことが分かっていれば、 回収された流体量を加算することで孔隙率も算出可能。
地層水以外の水分が含まれていないことが前提となっているので、 通常はOBMで掘削されたコアでしか分析されない。
Retort
Dean-Stark同様、本来はコア試料からSwを測定する手法。Crushed Sampleを用いる。
試料を密閉された容器で加熱し、冷却した蒸気から水分・油分を回収することで試料中の水分量・油分量を得る。
通常、異なる流体情報(Free Water量やClay Bound Water量、結晶水量等)100度付近(105degCや177degC)と高温(300degC、場合によっては540degC)の(最低)二段階で回収する。 ラボによって昇温プログラムは異なるが、その最適化も本Webinarでは触れられていた。
Retort法では、Webinarでも触れられている通り、試料中の全ての原油が回収できる訳ではないので、本当はその部分での補正が必要となる。また、Webinarによれば、多くのラボでは、未回収の水蒸気が存在するという前提で補正を適用している。
GRI Method
米国のGas Reserch Instituteが1996年に発行したレポート、“GRI-95/0496”で使用されている、Shale Sample分析手法。 おおまかな手順としては、
- As-Receive Bulk Volumeを測定
- 20 – 35 US meshに粉砕
- Dean Stark Extractionで水分量測定
- 試料を乾燥させ、Grain Volumeを秤量し、孔隙率決定。水飽和率計算
- Pressure Decay Permeability測定
となっているが、ラボによって手順が異なっており(例えばWeatherford Labでは-4 ~ -6 mesh sizeの試料を使用する)、“Modified GRI Method”、もしくは一般的に“TRA(Tight Rock Analysis)”とも呼ばれる。
試料のふるい分けが(少なくとも孔隙率・水飽和率計算には)影響を与えないというのも、本Webinarの主張の一つ。
(SPWLA Webinar 2017年11月分解説 了)
(2017/10/25 文責:小松英雄)
Carbonate Reservoirを、 貯留岩を共通のStatic/Dynamic Physical Propertyをもつ グループに区分すること(Rock Typing)を目的として、
- Rock Type分けに適切な指標の検討
- 貯留岩性状をコントロールする要因の理解
- ログを用いたRock Typing法の検討
を継続して実施している講演者が、これまでの成果を紹介するWebinarでした。
講演内容要約
講演者によると、炭酸塩岩の貯留岩性状は
によりコントロールされているので、これらを指標としてRock Typeが区分出来る (但し、現状ではKrはまだ組み入れられていない)。 更にPore Systemが単一のものか(Single System/Homogeneous Rock)、 DoubleあるいはTriple Systemであるか(Heterogeneous Rock)を含め、 理論的には14つが存在しうる最大のRock Type数となる。 このRock Type分けしたMatrixが、本Webinarの中心である、”RocMate”になります。
また、Core Dataが存在しない場合の手順も紹介されました。その場合のRock Typingは、
- まず浸透率を予測する( UROK/PASZや、最新の手法としては MPTEを使用)。
- CROPCを用いて、浸透率からとPc Curve形状を決定
- 更にPoropermの関係やSwiから、HOとHEとを区分し、Rock Typeを決定
- Rock Type毎に、CROPCをSw Functionに変形したC-Functionを用いてSwを計算する
という手順で行われます。
(以下、私見)
講演者の主張の中では、
- PcカーブはPower Functionで表現できる(つまりSw FunctionとしてはLambda Functionとなる)
- 浸透率からPcカーブ形状はユニークかつユニバーサルに決定することが可能
- Single Pore SystemであればPorosityとPermeabilityとの関係は単一のPower Functionで表現できる
という主張(発見)を、特に興味深く感じました。
関連論文の紹介
Webinar中では講演者の各研究成果は固有名詞で紹介されていましたが、 正式な定義はどの論文を読めば分かるのかについて、具体的な記載はありませんでした (Webinarのスライドでは主に「講演スライド」が引用されているため、論文の形で入手不可能です)。 そこで、比較的容易に入手可能な講演者の論文の中から、各研究成果に言及している論文を探し、その内容に基づき、各研究成果を要約しました。
UROK/PASZ
Electrical Resistivity and Gamma-Ray Logs: Two Physics for Two Permeability Estimation Approaches in Abu Dhabi Carbonates にて紹介されています(DOI:https://doi.org/10.2118/88687-MS)。 共にAbu Dhabiの炭酸塩岩貯留岩を対象に開発された、浸透率を検層カーブから予測する手法です。
UROK(Universal Rock Permeability)は、Rxo, Sw, PhieおよびそれらをIndex化(0から10までの値を持つ)したカーブを用いて、
KUROK=e(RxoI+SwI)/2×PhieI×ϕe100K_{UROK} = \frac{e^{(RxoI+SwI)/2}\times PhieI \times \phi_e}{100}
の式から浸透率を予測する手法です。
PASZ(Permeability Active Searching)はGRから浸透率を予測する手法で、
KPASZ=a×eb×GRK_{PASZ} = a \times e^{b \times GR}
の式を用います(a,b共にキャリブレーション用の係数)。
MPTE
Permeability Determination in Fractured & Non-Fractured Carbonate Reservoir; Using Innovative Multi Property Threshold Analysis Approach of Basic Log Data(DOI:https://doi.org/10.2118/148378-MS)にて紹介されている、浸透率予測法です。Multi Property Threshold Analysisの略。
実浸透率(Core浸透率)と似た挙動をする検層カーブを浸透率レンジや地域・層準ごとに(目で)選び、 それらカーブを用いて浸透率を予測する手法となっています。
CROPC
Revelation of Carbonate Rock Typing – The Resolved Gap(DOI:https://doi.org/10.2118/125576-MS)にて紹介されています。 正確には”CROPC”が具体的に何を指しているのかはこの論文からははっきりとは分からないのですが、この中で紹介されている、(予測)浸透率からPcカーブ形状を推定する手法が”CROPC”という名称でそのまま本Webinarで引用されていました。
この論文によると、Pcカーブ上でTransition Zone Topの圧力(TZT, psi)は、浸透率(k, mD)を用いて
PcTZT(psi)=1554×k−0.368Pc_{TZT (psi)} = 1554 \times k^{-0.368}
で、Transision Zone前のPlateauが終わる圧力(TZP, psi)は
PcTZP(psi)=1385×k−0.548Pc_{TZP (psi)} = 1385 \times k^{-0.548}
で、それぞれ計算することが出来る(係数はアブダビ海域の貯留岩であれば同一)ので、この関係式を用いて、予め予測された浸透率値から、Pcカーブ形状を求めることが可能となります。
(SPWLA Webinar: “The Ultimate Route to Carbonate Rock Typing RocMate” 了)
Improved Assessment of Hydrocarbon Saturation in Mixed-Wet Rocks With Complex Pore Structure
link to OnePetro
by Artur Posenato Garcia, Zoya Heidari, and Ameneh Rostami
(2017/11/01 文責:小松英雄)
Oil Wetでも成立するSwとRtの関係式を構築、更にその式を実データ及びDigital Rock Physicsの手法で検証した研究です。
各パラメーターが測定/算出可能で、各パラメーターの物理的な意味を説明可能、 特定の条件下ではArchieの式と同一の形を取り、 かつMix-Wetの岩石でも適用可能な式を構築。 得られた式はKennedy(2007)等に類似した、
\[\frac{\sigma_R}{\sigma_w} = \frac{1}{a(S_w)}\left(\frac{\phi-\phi_c}{1-\phi_c}\right)^{\frac{1}{1-L_g}}\left(\frac{S_w -S_{wc}}{1 – S_{wc}}\right)^{\frac{1}{1-L_o}}\]
(ただし、\(a(S_w)\)は \[a(S_w) = S_w^{\frac{-1}{1-L_{npw}}}\left(\frac{1 -\phi_c}{Sw – S_{wc}}\right)^{\frac{-1}{1-L_{npw}}}\] で与えられる) という形となります。
ここで、\(\phi_c\)や\(S_{wc}\)は Grain中もしくはHC中でIsorateしてConductivityに寄与出来ない水を表現しています。 また、\(L_g\),\(L_o\), \(L_{npw}\)はそれぞれ、 “depolarization factor of grain”, “depolarization factor of oil phase”, “depolarization factor of the nonpercolating water inclusions” (つまり各dropletの形状)を表わし、 Archieの式に当てはめると、\(m=\frac{1}{1-L_g}\), \(n=\frac{1}{1-L_o}\)に相当します。
式の検証に使用するDigital Rock Modelは、Wettabilityを任意に与えて、 更にそのWettabilityでのHC分布をより現実に近い形でSimulateできるようにしたもので、 このDigital Rock Model作成も本論文の一つの大きな柱となっています。
Mix~Oil WetのModelでは、log(RI)とlog(Sw)との関係が直線ではなくなる、 所謂Non-Archie Rockの挙動が再現されていますが、この形状は今回提案された式でも \(S_{wc}\)の調整だけで達成できることが確認されました。
(後日掲載予定)
(後日掲載予定)
(後日掲載予定)
Lessons Learned in Permian Core Analysis: Comparison Between Retort, GRI, and Routine Methodologies
link to OnePetro
by Aidan Blount, Tyler Croft, Brian Driskill, and Brian Tepper
(2017/11/12 文責:小松英雄)
Sister Plugを異なるベンダー・異なる手法で分析した結果、孔隙率・水飽和率で系統的な差異が認められたのでその原因を解明した論文です。
Permian Basin Bone Spring層のShale Core Sampleから得られた10組のsister plug (\(\phi\)レンジは4-14[pu])を 二つのコア分析会社(Vendor A, B)に分析させたところ、以下の結果を得ました:
- Dean-Stark: ほぼ同じ(0.5[pu]未満)
- Retort: Vendor Aの方がほぼ一貫して大きな孔隙率(1[pu]程度)を示す
- DS vs Retort: Vendor Aはほぼ同じ結果を示すが、Vendor BはDean-Starkの方が大きな孔隙率(約2[pu])となった。また、どちらのVendorもRetortの方が高いSwを示す。
生測定値に基づいて検討したところ、これらの差異は測定そのものではなく、 両Vendorおよび両測定方法が前提としている仮定による物であることが判明しました。
- Vendor AはWeightを測定の基本にしている。Missing Weightの補正も施しており、特にRetortではその補正量が大きくなっている。
- Vendor BはVolumeを測定の基本にしている。Missing Weightの補正は未適用。一般論としてVolume測定は誤差が大きい。
- Missing Weight補正は、Retortの場合は水が、Dean-Starkの場合はOilが、それぞれ失なわれたという前提に基づいている(実際にはRetortの場合、最大40%のOilが測定中に揮発してしまっているという報告もある)。